千の月をぬすむ
トリオックス名義ではじめて出した持ち帰り謎「月をぬすむ男」。2013年の謎フェスに出展して以来、各地の謎解きショップやフェス型イベントの物販コーナーに置いていただいているのですが、なんと頒布部数が累計1000部を超えました。
「作るなら、末長く楽しんでいただけるものを」と思って作ったこの冊子。当時はまだ珍しかった持ち帰り謎、今では多くの作品が出ていますが、旧作にもかかわらずいまだ手に取っていただける方がいらっしゃることに毎回驚きます(それだけ謎解き好きの裾野が広がっているんでしょうね)。皆様、本当にありがとうございます。
せっかくなので、持ち帰り謎を作るにあたって考えていたことを少しだけ。
制作者はミヒャエル・エンデの「はてしない物語」が大好きで、物語の世界は現実の世界と意外と近いところにあると思っています。何かの拍子でそういう別の世界に入り込んで物語世界を堪能してまた元の世界に戻ってくる、謎解きイベントでもそんな楽しみ方をすることが多いです(とはいえ謎解き自体が好きなので、物語性を排したストイックなものもじゅうぶん楽しめるのですが)。
ただ、自分の他の世界に入りこんでそれを楽しめるということは、向こうの世界の人たちも同じことができるはずなんですね。もし、何かのきっかけで向こうの世界の人物がこちら側に向いてきたら……世界の垣根なんか軽やかに飛び越えて、違う世界がもっと身近になるんじゃないか。そんな他の世界との繋がりを冊子で表せたら良いな、と思って「月をぬすむ男」と「空をゆく舟」を制作していました。もし、読後に物語世界となんらかの繋がりを感じてもらえたなら……こっそり喜びます。
さて。月をぬすみだした男は、次作「空をゆく舟」で月を空に返したわけですが、そろそろ彼の次の活躍を期待したいところですね……!
挿絵を描いてくださっている小池ウランさんからイラストをいただきました。ありがとうございます!